6月 〜和菓子を楽しむ〜
お茶を引き立てる美しい和菓子
六月十六日は『和菓子の日』。かつて日本では菓子や餅を神前に供えて厄除け・無病息災を願う嘉祥(かじょう)という行事がありました。これが起源となり、現代によみがえったのが和菓子の日です。
茶会での菓子は、お茶をおいしくいただくためのものでもありますが、季節を表現するという大事な役目を持っています。またおいしく分かりやすいのでまず興味をひくものかもしれません。
四季折々さまざまな菓子がありますが、私が茶会、茶事でいただいた和菓子の中から印象に残ったものをご紹介します。
お茶を引き立てる季節の和菓子を識り、テーマに合う取り合わせを楽しんだり、繊細な日本の美を味わいましょう。
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真っ白なお饅頭の真ん中にえくぼが。中を見ると驚くほど赤いこし餡があらわれ一気に華やいだ気分に包まれます。初釜には欠かせないお菓子です。
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ご主人が茶席をイメージしながら作る和菓子はNHK美の壺でも紹介されました。若菜は早春を感じさせる香高く味わいあるものです。
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昭和52年創業の比較的新しいお店ですが、ご主人は京都の塩芳軒と名古屋の川口屋で修業を重ね、文京区小石川に菓子所を構えています。夏季には作られない桜餅の季節は行列ができるほどで、関東風の普通の桜餅、黒糖を皮に加えた薄墨桜、関西風の道明寺桜餅の3種が用意されています。
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空也と言えば『空也最中』が一番有名。東京銀座の小路で見過ごしてしまいそうな小さなお店ですが、いつ行っても売り切れ。予約制で1週間前には予約がいっぱいになります。創業は池の端で130年ほどの歴史を持つ老舗。冬季限定の黄身瓢は見た目もかわいらしく、甘さと卵の風味でお茶会の人気者です。
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名古屋の美濃忠の『初かつを』は外郎と葛をあわせた羊羹で、添えられた糸で小口切りにするとかつをの切り身のような縞目が見えます。半透明のかつをを思わせる色が美しいです。江戸時代の俳人山口素堂の「目には青葉山ほととぎす初がつを」の句は初夏を視覚、聴覚、味覚でとらえたものとして有名ですが、思わずこの句を連想させますね。
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東京谷中の喜久月は大正六年創業の風情あるたたずまいの老舗。京都の白味噌餡を求肥で包んだ『あを梅』が有名。川端康成など文人や画家に愛された喜久月は、伝統工芸職人の指定を受けたご主人により丁寧な和菓子づくりがモットー。江戸千家家元教場でも季節のものをいただきます。
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東京両国駅から徒歩で10分ほど。ひっそりとした構えの和菓子屋さんです。上品な甘みと素材の良さ、それからお菓子への扱いも大変気を使われています。夏は箱に入ったぎりぎりの柔らかさの水ようかんが有名です。
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諸江屋は、歴史的に和菓子の発達した金沢の地に江戸時代末期に創業した老舗。一見ひまわりのようにも見える大きなサイズの唐菊せんべいは餅種せんべいに生姜砂糖を引いたもので軽くさわやかな風味にファンが多いものです。
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葛飾北斎が晩年を過ごした小布施町の街並み修復地区の中心に、1987年小布施堂本店が創業。室町時代からの特産品の栗を使った懐石料理やイタリアン、菓子などを提供しています。青竹水栗羊羹は夏限定でさらりとしたのど越しでパッケージにも工夫があります。
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美濃、恵那山のふもとにひろがる中津川は、栗きんとん発祥の地で古くから中山道の宿場町としても栄えた自然豊かな土地。すやは元禄時代に創業で当初は酢を販売していましたが、後に特産品の栗を使った菓子作りを始めました。栗きんとんは栗本来の味を大切に砂糖のみを加えた逸品。シンプルで素朴ながら気品ある仕上がりに。岐阜では新栗が出ると川上屋や恵那寿やといった各店がそれぞれの栗きんとんを競い合います。
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カルカン、羊羹、浮島からなる蒸し菓子です。
半田市は古くから酒、酢、味噌の産地で今でも多くの蔵が残っている歴史ある街。こうした土壌から茶道が盛んで菓子も発展を遂げてきました。和菓子を作り始めて100余年、伝統の技法と手作りの味にこだわった松華堂の菓子は添加物や速成製法に頼らず、素材の良さがよくわかります。季節の棹菓子はしっとりとやわらかく、季節に応じて色合いを変える優しい味わいが魅力です。 -
徳川吉宗公の代に菓子商を営んでおり、代々将軍家の菓子司として仕え、松岡長門の名を拝領したことから長門という看板になりました。以来300年、江戸を代表する菓子を製造してきたお店です。東京駅から徒歩5分、日本橋高島屋の手前にある店舗では、生菓子、半生菓子、松風等、変わらず丁寧に作られています。ゆずまんじゅうは皮にすり下ろしたゆずの皮が練り込まれており、さわやかな香りが口に広がります。