10月 〜名残り〜

不完全の美 わびさび

十月は風炉で茶を点てる最後の月。現代ではお茶の保存は一年を通して可能ですが、昔は茶壷に保管していたお茶も残り少なくなる頃です。季節も移ろい風炉の花も最後となり、その名残りを惜しみます。
五月から十月までの間、炉はふさがれ、代わりに畳の上に風炉を置いて釜をかけますが、十一月には風炉を仕舞い、炉を開き茶の世界の正月を迎えます。十一月の炉開きや茶壷の口切とは対照的に、この時期はわびたものが好まれます。不完全なものの中に美を感じるわびさびの世界には高い精神性を感じます。

風炉が最後の十月は中置きといって点前の中心に釜を据えることがあります。気温が下がるとともに釜をやや客に近づけてゆくという気づかいなのでしょう。お道具も金継ぎの茶碗や秋色のわびたものがこの季節に合うように思われます。
花は籠に多めに入れて終わりゆく季節を惜しむ名残の心を表します。

  • 中置で客に火を近づけ、温かくもてなしができるよう心を配る

  • 小間での中置の稽古

  • 10月は花も残花。籠にたくさんの花を活けて名残を惜しむ

  • 金継ぎ茶碗。陶磁器の破損部分を再生させることにより新たな価値が茶碗に生まれる