9月 〜重陽の節句 陰と陽〜

コントラストを楽しむ

古来中国では、奇数は良いことを表す陽数、偶数は悪いことを示す陰数と考えられ、陽数が連なる日はめでたい反面、不吉なことが起こるとされて邪気祓いをしたのが節句の始まりです。その中でも一番大きな陽数が重なる九月九日が『重陽の節句』となりました。

陰と陽はお茶の世界でも感じとることができます。
茶事の中でのハイライトは後座の濃茶です。食事を終えて菓子をいただいた後、中立ちをし、再度席入りし、濃茶が始まります。ここでは亭主が点てる茶を見つめながら自分の内側と向き合っています。自然と無言になりお茶をいただいた後、会話が再開します。その後に続く薄茶では自由なやり取りを楽しみます。静と動、あるいは陰と陽ともいえるダイナミクスが茶事の中に効果的に取り入れられています。

例)正午の茶事(風炉)

  • 初座
    掛軸 書、もしくは絵の鑑賞
    懐石酒、料理、菓子がふるまわれる
    炭点前お茶を沸かす火をおこす。見た目も美しく、最後に香を焚く
  • 後座
    濃茶濃茶一碗を皆でいただく。道具を手に取って味わう。松籟(しょうらい)の音。自省の時間
    薄茶干菓子と薄茶をいただく

茶事の流れの中で初座は陰、お茶をいただく後座が陽。最初の席入りには掛軸を掛け、中立ち後の席入りでは花が生けられるのが一般的です。さらに簾を外し光を入れる演出もあり、亭主は気持ちを改め着物も着替えます。
実際のおもてなしでも前半と後半で空気感を変えてみると面白いかもしれませんね。

  • 九月のテーブル茶

  • 菊と秋草の茶碗